ハビエル・バルデム演じるシガーという極悪殺人鬼はいとも簡単に人を殺していきます。
相手は殺される理由などひとかけらも無く、ただ偶然話しかけたり助けようとしたりその場に居合わせていただけなのに。
ノーカントリーのシガーという男は”不条理な死”というものを具現化した存在として登場しています。
今週、私がお世話になった二人の方が亡くなりました。
この死も私にとっては唐突でたとえ原因が病気であっても不条理ということでは変わりありません。
事故、災害、病、それは善人だから免れられるというものではなく、いつなんどきそれらに巻き込まれてしまうかはわからない…
死は決して特別なものではなく日常にあるもの。
そんなことを考えさせられた映画でした。
「現実ってこうでしょ?」と見たくないものを見せられたはずなのに暴力映画が苦手な私がなぜか不快に感じなかったのは不思議です。
コーエン兄弟の映像テクニックでしょうか。
それとも現実ってこんなもんよね、と私が達観しちゃっているせいでしょうか。
虚構の世界のこと、とは思えないリアルさ、不気味さがありました。
駅で無差別に人を刺していく逃走犯。
ホームで突然背後から人を突き落とした人。
「死刑になりたかった」とタクシーの運転手を殺した自衛官。
日々報道される痛ましい事件を耳にするたび
ノーカントリーに出てくる冷酷無情の殺人鬼シガーは平和呆けと言われる日本の日常にも確かに潜んでいます。
絶望、虚無、不毛…全編にわたりそんな言葉が頭の中をかけめぐる映画なのですが
ラスト、トミー・リー・ジョーンズが語る夢の話にかすかな希望が見えたような気がしました。
この映画、好きかも。